低血糖症状で倒れた重度の偏食児!それって、自閉スペクトラム症なの?はたまた一種のネグレクト?その②  ~偏食児の原因を哲学者デカルトの思考論で考えてみました~ | ももいくジョブ

はじめに

目の前の事実から、物事を推測してく思考法を生み出した、フランスの哲学者デカルト。今回、この思考法を使い、「極度の偏食児」の要因の可能性を考えてみることにしました。

事実⑴ 『極度の偏食』

⇒推測① 自閉スペクトラム症(自閉症、高機能自閉症、アスペルガー障害)には、随伴症状である感覚過敏*が多くみられ、その中で特に、嗅覚・味覚に対して過度の反応を示す「偏食**」が多い。 ⇒推測② ということは、この子は、なんらかの「自閉スペクトラム症」なのか? ⇒推測③ 自閉スペクトラム症の特徴でもある、社会性の欠如は、愛着障害(特に回避型)にも見受けられる。 ⇒推測④ ということは、この子は、なんらかの「愛着障害」なのか? *感覚過敏:ほんの数年前まで、感覚過敏という症状は、自閉スペクトラム症全てにみられないことから、診断基準には含まれず、単なる随伴症状として考えられていた。ただ、自閉スペクトラム症の根本的な障害として、感覚統合の障害(神経走行の過剰による感覚障害)が、神経画像の発達により解明されている。 **偏食:嗅覚・味覚が敏感なため、新しい食べ物には、特に、嫌悪感、拒否感を抱きやすい。そのため、食わず嫌いな傾向が高い。加えて、「これだけしか食べないという」極限的な偏食も多い。

事実⑵ 『低血糖で倒れてしまった、わが子の連絡を受けても、関心(園の要望に応えない)がない母親』

⇒推測① ネグレクトとは言わないが、子育てに、ある程度、無関心なのではないか? 実は、アメリカでこんな報告がある。田舎で子育てをしている、母親の子に対しての感受性と、都会で子育てをしている母親の、それとを比べた研究では、都会で子育てをしている母親たちには、子の要求に対しての感受性(応答性)が、田舎の母親たちより低かったのである。 なんとなく、今回の「極度の偏食児」の母親と環境が一致していると思いませんか? もしかして、この子は、親にとって「育てにくい子」であったのか?   ⇒推測② 「自閉スペクトラム症」の子は、感覚過敏(感覚処理障害)そしてコミュニケーションにおける相互作用や共感の障害によって、母(養育者)を含めた人に関心がなく、抱かれることを嫌がり、抱かれることを心地良いと感じにくい。 ということは、この子は養育者との間に確固たる愛着が形成されなかったのか? ⇒推測③ だとすると、この子は愛着障害が混在する自閉スペクトラム症なのか? ⇒推測④ ただ、愛着障害も感覚過敏を伴いやすい。 ⇒推測⑤ ネグレクトまでではないが、SNS等に夢中になって、子の要求にきちんと応答しないマルトリートメント(不適切な養育)であっても、脳の奥深くにある大脳基底核(線条体:せんじょうたい)という細胞群の活性が低くなることが報告されている。この細胞群(ドーパミン神経系)は、報酬系とも呼ばれ、興奮したり、達成感を得たり、褒められたりすると活性化する。ドーパミンによって「快」の感覚が線条体に送られ、その細胞群で「快」に繋がる行動が出現する。つまり、この細胞が活性されないと、褒められても喜びを感じないし、次の行動(褒められるために頑張るなど)に繋がらない。そうなってしまうと、やる気・意欲が低下し、愛着障害(特に回避型愛着障害)に至ってしまう可能性がある。 また、このマルトリートメントという厄介な行為は、脳梁(左右の脳半球を連絡する細胞群)部の萎縮をも引き起こし、脳梁面積がもともと小さい、男性ならではの思考スタイルが出現しやすい。例えば、論理的に物事考え、確実に1つの答えがでる理数系分野は得意であるが、いくつもの答えをつくることができる、ファジーな文系分野は不得手な傾向がある。遊びの好みも影響を受け、ごっこ遊び、見立て遊びには興味がないが(ヒトに興味がないので)、システマチックなゲーム遊びをより好む(モノには興味があるので)。また、脳梁面積が大きい女性は、何かをしながら、全く別なことも同時に遂行(ながら作業)することが得意であるが、その面積が小さいと、ながら作業が苦手となり、一点集中型の作業が得意となる。 これらの報告は、マルトリートメントによって脳細胞に変性が起きると、「コミュニケーション障害」や、固執・執着を背景とする「趣味の極限」といった、自閉スペクトラム症の症状が出現してしまうことになる。 ということは、何と無く、無意識にやっていた、親のマルトリートメント行為によって、脳が微細に変性してしまい、「愛着障害」それとも「自閉スペクトラム症」の症状(感覚過敏である偏食)が出てきてしまっていたのか?

デカルト思考論の結果

「極度の偏食」と「子育てに無関心な母」という2つの事実から、偏食が出現した可能性として「自閉スペクトラム症」と「愛着障害」が推測されました。もちろん、今回の子が、この2つの障害を抱えているとは決して断定できません。だって、これを確かめる術が存在しないのですから。 ただ、保育者のあなたには、「自閉スペクトラム症」と「愛着障害」との間には、濃厚な関係性があり、養育者から、必要な愛が注がれない(一方的な愛が、子に注がれるタイプの過保護・過干渉も含む)子の身体には、感覚過敏の一種として「偏食」がみられる可能性があることもご理解ください。 では、まず愛着(人を愛する力)を形成させるために、大事かつ必要なものを整理整頓していきましょう。

愛着形成で大切なこと

「子どもの心理学」で、愛着形成、安全基地などを学んだとは思いますが、愛着を形成させるために、最も大事な時期、そう、「臨界期」があることをご存じですか? 人見知りが始まる、生後6か月から1歳半というこの時期に、①応答的な愛情(赤ちゃんが欲する要求に、その都度応えること)と、②選択的な愛情(あなただけ特別な存在)を注ぐことがとても大事なのです。応答的な保育の大切さは、保育所保育指針にも記されているので、わかっていると思いますが、脳の成熟には、応答保育だけでは不十分なのです。 特別な存在という「愛」を注いでくれる養育者は、安全基地として子に認識され、そのお陰で、他の世界に関心が向き、探索行動ができるのです。そして、そこから社会性が養われていくのです。 でも、安全基地をもたない子は、探索行動に移ることができません。これによって、社会性の欠如(コミュニケーション障害)という、自閉スペクトラム症の特徴が出てきてしまうこともあるのです。 確かに、愛着形成には臨界期が存在します。 だからと言って、その時期が過ぎてしまったから、もう遅いとか、愛着形成不全になってしまう、といものではありません。実は、愛着障害って、可逆性なのです。だから、ある程度、元に戻ることができます。

まとめ

臨界期が過ぎてしまったけど、必要な愛をもらえていない(養育者は気づいていない)可能性のある子には、あなたのギューとしたハグと、特別な声かけ(「〇〇ちゃん、だ~い好き!」、「〇〇くん、愛しているよ!」)とで、余すことなく愛情を注いであげてみて下さい。 そうすることで、今回の子のような「極度の偏食」だって、なくなる可能性もゼロではないのですから。
参考図書等 ・過敏で傷つきやすい人たち 岡田尊司 (幻冬舎新書) ・愛着障害 ~子ども時代を引きずる人々から~ 岡田尊司 (光文社新書)             ・虐待で「脳の傷」ができた子ども…どのような症状が出るのか? 友田明美 (幻冬舎GOLD ONLINE)

(文責:小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)

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