いろいろある「保育所における〇〇ガイドライン」…。で気になる語句を見つけてしまいした。~誤嚥について~ | ももいくジョブ

気になるガイドライン!それは・・・

保育所保育指針で謳っている「研修強化」を果たそうと、園のトップは研修の機会を確保させたり、現場の皆も研修で得た知識を園に還元させたり、と、多くの保育者等が知識をアップデートするため「保育士等キャリアアップ研修」に受講して頂いています。 私がその研修で担当している領域は、「食育・アレルギー対応」と「保健計画・安全対策」です。ですから、「保育所における食事の提供ガイドライン」、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、「保育所における感染症対策ガイドライン」そして「保育所における事故防止および事故発生対応のためのガイドライン」と、あらゆるガイドラインに触れながら研修を進めています。 そこで感じたガイドラインの語句(言葉)が…。気になってしょうがないのです! そのガイドラインは、なんと、「事故予防及び事故発生対応」です!

真の誤嚥とは?誤飲とどう違う?

この分野は、学校保健や安全学を専門とする大学教員や小児科、救命の医師がよく執筆を担当しています。因みに私の専門は、皆を健康へと導く手法を考える「公衆衛生学」と「解剖・生理学」です。人体のカタチと働きを知っているので、疾病やケガを予防し皆を健康に導く方法が考えられます。 (「私が所属していた医学部公衆衛生学医局の隠れ話を1つ。そこに集まる医師は、将来、厚生労働省の技官とかWHO志望の医師が集まります。現、産業医も集います。その医師らは「疾病ではない健康な人々」を対象にする特殊な人たちです。ただそこにいる医師たちも、疾病が診れないと、健康も診れないという教育が行われ、週1回の研究日(バイト)に病院に行って患者さんを診ていました」) 本題に戻りましょう。ガイドラインは、あらゆる有識者を入れて作られる、由緒正しきものなのは重々承知の上で、一つ提言したいのです。 ガイドライン内にある「誤嚥(食物)・誤嚥(玩具・小物)」のお話しをさせてください。 まず、「誤飲と誤嚥」の違いと、真の意味の「誤嚥」からです。 たいていの医学系辞典(看護学リハビリ)には、 ●誤飲:異物が胃に入ってしまったことを指す ●誤嚥:食べ物や異物が気管に入ってしまったことを指す と記されています。もちろん、これは正解ではあるのですが。。。 これを前提としてしまうと、事故防止及び事故発生時の対応ガイドラインのように、窒息を引き起こす誤嚥(食物)と誤嚥(玩具・小物)というふうに分類にされやすくなってしまいます。つまり、玩具や小物などの異物は、気管に入って窒息してしまう、食べ物も異物も気管に入ることで窒息してしまうと…(もちろん、これ自体は、間違いではありませんが)。 加えてガイドラインのP3には、誤嚥(玩具・小物)の文章として、 *口に入れると咽頭部や気管が詰まる等窒息の可能性のある大きさ…という文言が記載されてしまっています。 ガイドラインでさえ、誤嚥を曖昧に使用しているのです。 図の①に示したように、喉に物(食べ物も含む)が詰まった、つまりこれは「咽頭部窒息」であり、気管部での窒息ではないので、気管部に異物が入ったことを表す「誤嚥」を説明する文章に、ガイドラインは、咽頭部も加えてしまっていることに気づいてください。咽頭は気管よりも上の部分に位置していますよね。

まとめ①

少し、整理しますね。 嚥下というのは、飲み込んだものが食道から胃(消化管)に送られることをいい、誤って、飲み込んだものが食道の前方に位置する気管の方に入ってしまうことを「誤嚥」といいます。誤嚥は、あくまで「嚥下:飲み込む」を視点にしており、飲み込む前提の「食物」がメインに気管の方に入ってしまったことに対して使用します。よく耳にする「誤嚥性肺炎」とは、飲み込む力が弱まって生じる高齢者に多い疾患なのです。 一方、「誤飲」というのは、本来食べ物でない玩具やコインそしてタバコなどを間違って飲んでしまった場合を指します。これは「口にするもの」を視点としており、本来、口にしてあたりまえの食物は、もちろん誤飲といいません。 食べ物も玩具・小物も飲み込んだ後、喉(咽頭部)に詰まらせ、鼻や口からの空気の通り道がシャットアウトしてしまうことで窒息してしまうことは多いにしてあります。 窒息する場所というのは気管だけではないことから、ガイドラインが「誤嚥」だけで表現しているのは、いささか強引であることを感じてくださいね。 普段は、気管から肺に空気を送らなければいけないので、気管上にある蓋(喉頭蓋)は閉じられていません。しかし、飲み込みゴックン(嚥下)した時は、飲み込んだものが気管に入らないよう、反射によって喉頭蓋は閉じられます。 ただ、乳幼児の場合は、呼吸数が成人よりも多く、反射を司っている脳の発育を未熟です。このような理由より、異物であっても、小さいもの(6㎜程度)であれば、気管に入ってしまい窒息(誤嚥)してしまうこともあります。気管に見つかる異物は成長とともに件数は減少してきます。 このように、誤嚥(食べ物・玩具などの異物)による窒息以外に、誤飲による異物の咽頭部窒息、食べ物による咽頭部窒息があることをご理解くださいね。 だから、私は、誤飲からの窒息、食べ物からの窒息(誤嚥も含む)というふうに、「窒息」という状態を引き起こす「場面」で学生たちには教えています。

まとめ②~保育者の視点は「飲み込む力」より「飲み込んだもの」が大事!~

保育者の視点で大事なのは、「嚥下」の部分でなく、あくまで「口にするもの」だと思います。玩具を飲んでしまったら、また大き目の食べ物を飲んでしまったら、それらがどこに向かったか(気管なら誤嚥、胃なら誤飲)の語句の違いが重要なのではなく、飲んでしまったものが、どんな状態を招くのかを知ることが大事なのです。喉に詰まっても「窒息」、気管に詰まっても「窒息」を引き起こす危険が高いのだから、それを防止すべく策をとるのが保育者です。もともと、飲み込む力(嚥下)が弱い乳幼児を対象にしている保育は、「口にする」ところからの配慮が必須であることは言うまでもありません。 参考図書 〔改訂版〕事例解説 保育事故における注意義務と責任 著:古笛恵子(新日本法規)

(文責:小田原短期大学 医学博士 准教授 三浦由美)

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