あなたも年々感じていませんか?「困った大変な子」が多くなってきていると。それって実は…。 ~急激な発達障害児の増加は、先天要因より出生後の環境要因が大きいから!?~ | ももいくジョブ

脳の発達に欠かせない「栄養」

自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)や学習障害の発達障害は、生まれつき脳に障害(遺伝子、未熟児、低酸素脳症、胎児性アルコール症候群、農薬などの影響)があり、それぞれ特有の症状がみられる先天性疾患であると、学生時代あなたも習ったと思います。 ですがここ最近、胎児期のみならず、小児期における環境暴露【養育環境(マルトリートメントも含む)、栄養状態(DoHad説*)、親の年齢、夜更かし睡眠】によって、神経回路(シナプス:下記図を参照)の形成に異常を起こし、発達障害の症状がみられることが明らかになっています。私の「保健」の授業では、後天的要因も含めて教えていますが、残念ながら、「子どもの保健」の教科書類には、こういった類の記載はないのですよね。 今回は、発達障害の後天的要因の1つ、脳細胞の成熟に不可欠な「栄養」についてお話しますね。 そして、新たなスタートの来月4月号では、心機一転、ヒトの起源「発生学」のエッセンスを含んだ、DoHad説(胎児期そして幼児期の栄養状態そして環境要因が起因して、将来、生活習慣病や自閉症など発症する)について語らせて頂きます!! *DOHaD とはDevelopmental Origins of Health and Diseaseの略であり、胎児プログラミング仮説または、生活習慣病胎児発症説とも言われる。これは、「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」という概念です。                           (昭和大学Dohad班のHPから引用一部改変)

脳の発達

身体の部位の発育は、年齢によって異なること、既に「スキャモンの発育曲線」でご存じと思いますが、人間たらしめる「脳」は、右図にあるように、1歳で約70%、4頃までに95%と急激な発達を遂げます。 それに、欠かせないのが、「栄養」であり、体験という名の「活動」です。 虐待やマルトリートメントといった体験が、もしあったのなら、健全な成長が望めないことおわかりと思います。まして、「栄養」って、生物の礎となるものです。そのヒトを創り出している「容:カタチ」や「感情」も、実は、食べ物由来の「栄養」なんです。  図①で詳しく見てみましょう。当然のことながら、脳の発達は、出生前の胎生期から始まっていますよね。この時期に、最高司令の集合細胞である「神経細胞体」と、ドーパミンなどの神経伝達物質の受け渡しの場、「シナプス」細胞の分裂が盛んとなって、神経回路網(ネットワーク)が多く形成されます。出生後は、脳細胞に栄養を与える等の働きをもつ「グリア細胞」数が多くなり、歳を経るごとに、記憶や学習といった脳の中心的な機能を獲得していくのです(図②)。 獲得機能の面からみると、運動野(筋肉を動かす:座る、歩く、走るなど)よりも、視力を表す、視覚野の発達は、1歳にかけて急激に大きくなっています。これは、自分を育ててくれる保護者の識別を、眼から確実できるよう発達するのです(図②)。だからこそ、虐待によって、視覚野細胞が萎縮脱落してしまうことも報告されています。
図①:木村-黒田純子 臨床環境医学(第23巻第1号)2014から引用一部改変図②:木村-黒田純子 臨床環境医学(第23巻第1号)2014から引用一部改変
胎生期の栄養は、母体から、そして出生後の大半の栄養は、母乳からなので(図①.②)、これらを通して、汚染物質が、胎児および乳児に浸透しやすいことが見てとれます。身体にとって、害の物質を識別する血液脳関門(図①を参照)も未発達な胎生期~小児期では、簡単に、悪いものが細胞に入ってしまいます。このことから、妊産婦も子どもが生まれてからの母親も、子の細胞にとって良いものを食べる必要があります。 では、早速、脳の成長にとって必要な栄養素(食べ物)を何か見ていきましょう!

脳の成長に必要な5つの栄養素

Ⅰ不飽和脂肪酸:さんま、鰯、鯵、鮭などの魚油、大豆油、ゴマ油、豆腐、味噌など

右図は、細胞のイラスト図を表しています。ヒトを含む動物の細胞には、細胞膜によって個々覆われており、その主な成分は、脂肪酸(脂質から代謝される最小物質)なのです。 脂肪酸には、常温で固体を示す飽和脂肪酸(脂身が多い肉、ソーセージ、インスタントラーメン、チョコ、クッキー、ドーナツ、ポテトチップスなど)と、常温で液体を示す不飽和脂肪酸(魚油:DHA・EPAなど)の2種類があり、細胞膜の形成には、このどちらの脂肪酸も必要となってきます。右図を見ておわかりのとおり、真っ直ぐな棒を指しているところには「飽和脂肪酸」、曲がっている棒を指しているところには「不飽和脂肪酸」となっていますよね。これは、ただやみくもにつけたものではなく、真っ直ぐ、つまり、硬い脂の脂肪酸と、曲がっている、つまり、柔らかい脂の脂肪酸を表しているのです。「頭がいい」ことを、俗に「頭が柔らかい」と表現しますが、柔らかさ、しなやかさを造り出しているのは、この不飽和脂肪酸なのです。特に、脳細胞の正常な発達に不可欠な、不飽和脂肪酸の積極的な摂取が大事なのです。 EPA・DHAの効果を報告した最近の研究では、自閉症児の多動性、衝動性を抑えることができると認められています。

Ⅱプレバイオティクス(善玉菌の栄養源):オリゴ糖、食物繊維(大豆、納豆、ひじきなど)及びプロバイオティクス(善玉菌):乳酸菌、ビフィズス菌

近年の研究で、腸内の環境は、脳の状態に影響を与える「腸脳相関」があることが認められています。現に、自閉症児の子どもの腸内には、ビフィズス菌などの善玉菌が少なく、悪玉菌が多いことが数々の論文で明らかにされています。 また、免疫細胞の60~70%は腸にあると言われており、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌(腸内の善玉菌、悪玉菌の優勢は方を味方する菌、つまり、悪玉菌が多いと悪玉菌になる)70%が理想的なのです。このバランスを保つためには、上記の食物が効果を発揮してくれます。

Ⅲ鉄:豚・鶏レバー、鰹、牛赤身肉

上記の食材は、全身の細胞に酸素を届け、セロトニン(脳を安定させ、心地良さを感じさせる)、ドーパミン、ノルアドレナリン(興奮系神経系)などの神経伝達物質の合成に必要な「鉄」が多く含まれています。これらの物質らは、シナプスから分泌され、脳がその物質特有の活動を呈します。例えば、興奮系神経伝達物質であるドーパミンが分泌されると、「やる気」、「意欲」、「快感」などの感情が出現されます。

ⅣビタミンB群:豚、鶏、牛のレバー、鰯、鰹、さんま

上記の食材には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、γアミノ酪酸(GABA:抑制系神経系)などの神経伝達物質の合成、そして脳の正常な機能に必要な、ビタミンB群が豊富に含まれています。

ⅤビタミンD:鮭、卵、マッシュルーム、干ししいたけ、紫外線により体内で産生

脳機能、免疫(アレルギーによる炎症抑制)、心臓機能に不可欠で、近年注目の栄養素です。ビタミンDの豊富な食材を上記に表しましたが、摂取量に限界もあるため、野外活動など日光を浴びることで(手のひらで10~15分程度十分)、体内で積極的に産生させることが重要です。(因みに、紫外線を過剰に毛嫌いすることによって、ビタミンD欠乏症である、骨が石灰化(硬く)しない「くる病」の罹患率増加が、近年問題となっています)。 *保育のプロのあなたは、保護者さんから、「離乳食」も質問を受けると思いますので、 以下のことを留意し指導てくださいね。 1:EPA・DHAが多く含まれている青背魚(さんま、鰯、鯵)は、脂質が多いでので、カミカミ期(9~11カ月)から、そして、鮭も、脂質が多いので、モグモグ期(7~8カ月)から、よく加熱したものを、少量ずつ食べさせ様子を見てください。 2:食物繊維豊富な、大豆(水煮)、そしてひじきは、カミカミ期(9~11カ月)から、納豆は、モグモグ期(7~8カ月)から、加熱したり、おかゆやうどんに入れたりして食べさせてください。乳酸菌豊富な、無糖のヨーグルトも、このモグモグ期からで大丈夫です。オリゴ糖が含まれてる、たまねぎ、ブロッコリー、カリフラワーそしてバナナは、ゴックン期(5~6か月)から、すり潰して食べさせてください。 3:ビタミンB群豊富なレバーは、新鮮なものを選び、カミカミ期(9~11カ月)から、すり潰したり、細かく刻んだりし与えてください。 4:ビタミンD豊富な卵は、ゴックン期(5~6か月)には、卵黄のみ小さじ1杯から初めてください。 モグモグ期(7~8カ月)では、卵黄1個から全卵(1/3)、カミカミ期(9~11か月)は、全卵(1/2)、バクバク期(1から1歳半)では、全卵(1/2)から全卵((2/3)というように、アレルギー反応が強い白身は、卵黄に慣れてから食べさせてください。きのこ全般は、カミカミ期(9~11か月)から、歯ごたえが残るので、細かく刻んであげてください。

まとめ

たかが「栄養」されど「栄養」。ヒトの根源となる「栄養」それ次第で、細胞がきとんと働くか否かが決定されてしまう………そう、脳細胞に必要な栄養が不足していたのなら、正常な脳機能が発揮できず、例えば、発達障害の症状が現れてしまうこと、おわかりになったと思います。 NHK「おかあさんといっしょ」で人気の「おすしピクニック」、「おさかな天国」そして「さかなサカナさかな」などの「ことば遊び」を通し、子どもたちに、脳の栄養素(DHA・EPA)を食べてもらえるよう、今回の知識を「食育」に活かしてみてくださいね。
参考図書・参考文献 ・木村-黒田純子 臨床環境医学(第23巻第1号)2014 ・ 櫻本三輪子 医師が教える子どもの食事 ワニブックス ・ 細川モモ 成功する子は食べ物が9割 主婦の友社

(文責:小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)

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