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- 子どものマスク着用に賛否あり~危機・安全管理の視点から~
オミクロン株で更に感染拡大!

コロナ累計感染者数が400万人を越えた(2月15日時点)。 感染者が100万に達するまで1年6カ月を要し、200万人までは5カ月、今月の上旬には300万人に達し(2月3日)、そして僅か12日で100万人が感染してしまった結果である。 いかに、オミクロンには特殊な能力を有しているかがわかる。
第6波をつくりだした新たな敵、オミクロンBA.1。だた、その亜種(派生したもの)であるステルス・オミクロン(BA.2)は、BA.1より18倍(接触者に伝播する確率)ほどの感染力*があるとの報告(因みにあのデルタ株は10倍である)もあり、第7波の原因株ともなりえる。そして、それが徐々に日本を侵食している。
*2021年12月17日掲載イギリス論文:家族感染を追跡した調査
増殖の場が上気道ということもあり、臨床症状が花粉症とも重なるオミクロン。そしてこれは子どもの細胞でさえも宿主の場として胡坐(あぐら)をかいて居座る。
だから今、子どもの最前線の場である保育現場が「休園*」という形でダメージを受けてしまっている。社会インフラ(基盤)である保育が大ダメージをおうと、もう1つのインフラ医療現場がまわらなくなる。
保育・子ども園の休園:777か所(2月3日時点)
オーマイガー!
政府分科会も慌てて「幼児にも可能なかぎりマスク着用」をお願いしてきた。
なんてこった!
そんな多忙極まりないこの時期、「保育士等キャリアアップ研修」を受講しなければならない先生達が数多くいる。本当に頭が下がる思いだ。
研修開催法(対面か遠隔か)は、緊急事態宣言が発令されない限り、たとえ、蔓延防止重点措置下だとしても、その決定は主催者側に委ねられる。
私は研修講師として、以下2つの観点より、研修を遠隔(Zoom)で行う判断をした。
①予見可能性:
ハザード(感染という危険が潜んでいる)が存在していることを考慮。つまり、市中感染(日常生活の中で感染した、又はどこで感染したのかわからない)を否定できないオミクロン感染拡大の最中、対面時間の長い研修を行うことで、万が一、研修の場がクラスターになる可能性はゼロではない。
②結果回避性:
この感染拡大期の今、どこの場でも感染ハザードになりうることは容易に想像できる。危険が予見できるのであれば、それを回避することが必要である。もちろん、キャリアアップ研修を受講することも大事な仕事の1つではあるが、対面研修がきっかけとなって、保育インフラの仕事に支障をきたすことは避けるべきである。
本来、予見可能性と結果回避性から生じる義務は、「注意義務」を構成する大事な要素です。
もちろん、キャリアアップ受講生に対して、単なる研修講師の私に「注意義務」が発生するわけではないが、「リスク回避」の考え方を、日常のイベントに落とし込みながら生活していると、「危機管理・安全管理」癖のついた脳ができあがってくる。
オミクロンというアラームだらけの環境の下で保育をするあなたにも、現状の危険性を読む癖と、それを回避し改善策に変えていく癖が、常に求められていますよね。
保育園マスク着用の賛否
そこで、さきほどの「可能な限りマスク着用の推奨」はどうでしょうか?
「賛否両論」あるのは然り。
政府の提言を受け、2歳クラスには「マスク着用の練習」を、3歳クラス以上から正しい着用(マスクをずらさない、マスクのヒモを舐めない)を促すなどの対応をとる園もある一方、マスク着用を積極的に行ってはいない園もある。これは、子どもの発育の場である「保育環境」には、マスク着用の必要性より、もっと留意しなければならない危険性(発育の不安も含め)を重んじてのご判断の結果だと思います。
子どもたちを見守るという注意義務から考察しますと(もちろん発達により危険が低いものもありますが)、
予見可能性:
① マスク紐の引っ張りによる転倒の可能性
② 暑い時マスクを外せない危険性
③ 衛生コントロールが確立されていないので、友達のマスクや拾ったマスクをつけてしまう危険性
④ マスクを舐めるなどして水分を含んだ不織布マスクは、通気性が悪く苦しくなりやすい危険性
⑤ マスクによって顔の大半が隠れてしまうことで、話し手の表情を読み取る経験が乏しくなる危険性
結果回避性:
「発達段階に合わせたマスク教室」を通して、上記の予見可能性の知識を一つ一つ学んでいく機会が必要。時間的に学びの場が担保できなければ、危険可能性が予見できる限り、回避(マスク着用は必要なし)することも策と思われる。
子どもの感染を抑える目的である「マスク着用」は、感染以外のリスクが生じる可能性がありましたね。安易に、マスク着用を子ども達に求めるより、周りにいる私たち大人が、マスクとワクチン(できれば)で身を守っていくことこそ、子ども達を守るスマート(賢明)な策なのですね。
参考図書
〔改訂版〕事例解説 保育事故における注意義務と責任 著:古笛恵子(新日本法規)
(文責:小田原短期大学 医学博士 准教授 三浦由美)
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