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- 「うめこのばあやの保育日記~こども主体の保育を考える~」
はじめに・・・子ども主体の保育とは?
保育現場では保育の質の向上が大きな課題になっていますね。
日常の保育をあれこれと語り、子どもの活き活きした姿が常に保育者の口から語られるような保育者集団なら、あたらためて「質とは?」等検討しなくても、その充実した毎日の保育の様子を想像できますね。
それに、子ども達はとってもたくましく、自分の置かれた状況の中で、柔軟に生きています。
もちろんそれを支えている家庭や保育者があってのことですが、それでもやっぱり子どもの力は大きく、楽しみ上手、遊び上手です。
今回は 忍者を楽しむ子ども達に視線を向けてみました。
(※事例は創作ですが、ヒントは筆者が保育巡回相談をしている各園での出来事を参考にしています。)

4歳児クラス小田原城へ行く
こみね保育所の4歳児さんの教室には
跳び箱やマットが置かれ、天井から綱が下がっています。
段ボールで作った狭いトンネルがあったり、的あてが壁にかかっていたりします。
そして入口には 「にんじゃ どうじょう」の看板・・・!
5月の郊外保育(以下遠足)で、小田原城に行き、“本物”の忍者にあった子ども達。
「かっこいい。すごーく高い所からふわりって降りたよ」
「水の中も平気なんだって」
「しゃーーって、遠くからでも、手裏剣を投げて大当たりだよ」
と大興奮!!
園に帰って、園長先生や年長さん達にも報告しました。
園に帰ってから、子どもたちは「昨日の遠足について」話をしました。F先生は、子ども達の話を交通整理し、感動したことクラスみんなの共通の事にして、保護者あてのクラス便りにも載せました。
家庭でも「忍者に会った」という報告や「また行きたいな」等の話がでたそうです。
行くまでの準備や気持ちを盛り上げる活動、行った場所での発見・疑問や感動、そして発見や感動を言葉にして伝えていくこと等、一連の活動を計画し、作り上げていくことが保育者に求められます。
充分に構成された環境に関わることを通して、こどもの主体的な活動が生成されていきます。遠足はただ単に「楽しかったね」「面白かった」「良い経験をした」という事だけではなく
その経験をもとにし、次の遊びへと発展できるような保育の内容の一つと言えます。

4歳児 忍者にあこがれる
実は2週間前、F先生は図書室で忍者の本やお城の本を選びました。クラスで「今度、遠足で小田原城に行きますね。行ったことがありますか?」と聞いてみました。
何人かは行ったことがあり、「大きいよ」「高い所は怖い」等の話がでました。
「おうちの人にも聞いてみてね」と言ったところ、次の日「小田原城には忍者がいるんだって。おばあちゃんが言っていた」という話がでました。
「えーー忍者? 忍者ってどんな人かな、会えるといいね」と話し、忍者の本やお城の本を1冊ずつ見せながら、絵本棚に置きました。
給食の後の時間、忍者の本やお城の本を見ながら、「昔の人だから本物はいないよね」等話していました。
ところが、遠足で“本物”の忍者に出会った子どもたちは
がぜん張り切ります。
「高い所から降りる」
「手裏剣を的に当てる」
「縄にぶら下がる」等
やれそう、やりたい、もっとできそう、と修行する気 まんまんです。かっこいい憧れの忍者になりたい!!と気持ちが髙まります。
先生は最初から忍者ってかっこいいよ、やってみようかとは言っていません。気持ちの中では、忍者ごっこって面白そうだし、運動あそびや造形あそびに繋がるし、みんなで考えたり作ったりできそうだし、絵本を読んだり字を書いたりの活動にも広がりそうだ、とは思っていますが、保育者が主導するのではなく、やる気になるのは子ども達です。遠足でお城に行ってどのような感動をするのか、何にびっくりして意識に留めていくのか、つまり、主体的な活動に繋がる興味・関心をどのように持つかは、子ども達に委ねられています。
保育者は環境を有効に利用し、子ども達がその環境に働きかけやすいように、状況を用意しますが、子どもをひっぱってそこに向かせるというのではありません。保育をこなしたり、子どもにやらせたりすることのないよう、子どもが遊びの主体となり、選択できるような環境をつくることが重要です。

★4歳児 忍者修行にはまる
F先生が忍者に関する絵本・紙芝居を読み聞かせると、子どもたちは早速、遊びの企画を始めます。
「忍者修行」と言いながら、跳び箱から降りたり、音の出ないように歩いたり、壁にぴったりくっついて移動したり、色々な体の動きを試し始めました。剣を作るこどもや、手裏剣を作る子ども、あるいは、風呂敷を体に巻く子どもなど、好きな遊びの時間に忍者関連がおおはやりです。
担任は親切にはしますが、おせっかいしないように、うなづいたりはするけれども手は出さないように等、子ども達が自分たちで工夫しながら遊べるように援助します。
物の準備や場所の確保等の
環境調整や、いざこざの仲裁等
関係調整はしますが、「○○がよい」「こうしたらどうか」等は極力避けます。
「〇○したいのね」「そうか、いい考えね」等、子どもの考えを肯定的に認め、やりたい気持ちを支えます。何ができた、上手に作ったというような結果を捉えるのではなく、いまここでの試行錯誤に価値があるのです。
【参考書籍/サイト】
●本:なるほど忍者図鑑 (作:ヒサクニヒコ 国土社)
あかにんじゃ (作:種村弘/絵:木内達朗 岩崎書店)
●紙芝居:にんじゃでござるシリーズ (教育画劇)
●YOUTUBU しゅりけん忍者 なんじゃもんじゃにんじゃ 等
https://www.youtube.com/watch?v=cgEs1wFuRmY
文責:小田原短期大学 乳幼児研究所所長 宮川萬寿美 (役割:うめこのばあや)
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