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- 園長が悪いとその園は腐る…、「園長の質の低さ」これこそが離職の最大の理由なのか!?
今こそ問われる園長の質

待機児童体制として「子育て安心プラン」の施策の中、2022年末までに、約32万人分の保育の受け皿の整備をめざしている。このプランを達成させるため。規制を緩和し、人員が足りていない状況で保育の現場を回そうとしている国のトップ。
この影響もあって「保育の質」の低下が懸念される中、7月末に「園バスとじ込み熱中症死亡事故」を起こした元園長も含め、このところ、「園長の質」を疑う事例が目立つ。
大阪市にある私立認可保育園では、コロナに感染した保育士が出勤(8月24日)していたことを保健所に隠蔽。このことで「濃厚接触者」の調査がされず、その後、園児2人を含む、複数の感染者を出してしまった。 しかしこの園長は、「前日の23日は園に出勤していない」と、嘘の報告を保健所にするよう、感染した保育士に対して指示をしていた。そのため園は臨時休園を免れた。
この園長は「園長という立場にありながら、あってはならない間違った判断をしてしまったことを心より反省している」と陳謝はしている。
でも、なぜ、自身の判断により招く「リスク」を想定できないのか? 「目の前の不都合な事実を揉み消す、それさえすれば解決できる。面倒なことから逃れられる。と短絡的に思ってしまうのか?「園長としての責務を全うしてしていない」あきれるほど稚拙な園のトップである。
このようなトップが多いこの世で、世界中の子ども、そして大人をも虜にしている大人気漫画の「鬼滅の刃」に登場してくる人物の多くは、気持ち良いほどの熱い責任感をもっている。ここまでの社会現象となる漫画には、やはり理由がある。この1つに、「部下のためなら、自身が盾となる強い責任感をもった理想の上司像が描かれていること」が挙げられると思う。
責任感の疎い園長の元で保育者として働くには、感情を押し殺して「諦めの保育」をやるしかないが……。人間だもの辞めたくもなる。
そこで、今回、「保育職から離職したい」原因の多くを占めるであろう「園長の質」についてお話ししたいと思います。 (先月号では、コロナ禍で、手洗い消毒が増え、手指に生息している食中毒の原因である「黄色ブドウ球菌」が、より多くなっている実験対象者による、「最適な手洗い方法」を提示する予定でした。が、立て続けに園長の不適切な行為を目にするようになったので、今月号は、急遽のここに触れたいと思い内容を変更させて頂きました)。
園長と保育士の質、そして離職率
園の保育の質が何によって決定されているのを明らかにした「保育の質」に対する規定要因研究1)の結果から、まず「園長の園の保育の質への意識」の要因をみてみると、 園長は、①経験年数が長いほど、②四大卒、大学院卒の者ほど、「自身の園で高い質の保育を提供している」意識が高かった。施設タイプ別では、幼稚園でその傾向が多く、認可保育園では少なかった。そして、職員規模が多いほど、園長の意識が高いことがわかった。
次に「離職率」を決定する要因として、 園長が、①現場経験が多いほど、②小学校教諭免許を持っているほど、離職率が低い傾向であった。しかし、③園長の専門性を、保育現場に取り入れ、力を入れているほど、離職率が高かった。園長の保育意識が高すぎて現実の過酷・多忙な仕事内容とマッチせず離職に繋がっている可能性が高いと研究者は考察している。 さらに職員規模が大きいほど、離職率が低く、政令指定都市(人口50万人以上)、中核市(人口20万人以上)で離職率が高いことが明らかとなった。これらの地区は、保育者確保が課題となっている場所であり、延長保育、病児保育などのニーズに対応しなければならない現場であるため、保育者の負担が大きくなっていることが離職の理由であるとしている。
上記の研究には、離職率の要因として「園長の人間性」といった、本来、離職とダイレクトに繋がる可能性のあるものについては、解析内容に含まれてはいなかった。しかし、園長と現場の保育者との保育に対する、「志の方向性」のズレ(←この部分が互いにマッチしていれば、保育者は園長に対し、少なからず「バカなトップ」とか、「信頼できないトップ」といった、人間性を否定するような感情を抱きにくくなりますよね)が小さければ、離職にストップがかかると思います。
まとめ
この研究の大まかな結果のとおり、「園長の保育に対する意識(例:コロナ感染を隠蔽してでも休園を免れたい)」が現場の保育者の意識(例:コロナ感染をきちんと報告して休園したい)との間に解離が起こってくると、やはり「園長についていけないから辞めたい」となっていくのでしょね。
あなたのトップはどんな方ですか?「鬼滅の炎柱」のような方ですか?
1) 両角亜希子・長島万里子:大学経営政策研究 第7号 89-104(2016)
(文責:小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)
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