ももいくジョブ

「あなたの心を脅かす、保護者からのクレーム・保護者との関わり方への対応」

次は「命を護れる保育者」を目指してみませんか? これは、医学部人体解剖学出身「子どもの保健」担当の私から、このブロブを読んで頂いているあなたへのメッセージです。 預かった子ども命を護るには…それには、あなた自身が抱えているストレスをキャッチする危機管理能力が備わっていないといけません。 コロナパンデミックの先行きが不透明の中、コロナ情報に振り回されながらも、感染症マニュアルに沿って、園内の消毒に明け暮れ、毎日毎日、頑張っているあなた。それなのに、保護者から不条理な言葉を浴びせらせたり、不満や怒りの感情をぶつけられたり、一生懸命対応しているのに、保護者にわかってもらいない…そんな「心の疲弊」を起こしている状態では、その能力は発揮できませんよね。 なので、今回は、精神衛生を脅かす、保育者特有のストレスである「保護者との関わり方」に焦点をあて、お話ししてみることにします。 「養護と教育」のスペシャリストである保育士は、保護者に「報告・連絡」のみならず、保育に関する「指導」ができる立場なので、子ども達だけではなく、その保護者との関係も必然的に密になってきます。密になっているとはいえ、保護者との信頼関係が構築されているとは限りませんよね。 保護者から、わがままや文句を言われたり、こちらの言い分に納得してもらえなかった、といった対応の後には、「すごくエネルギー(心)が消耗してしまった」、そんな経験、いっぱいあるのではないでしょうか。 あなたの「心の疲弊」を生み出すものって…実はこんな「社会」の中で働いているからなんです。

保育園・保育士のポジションが低い社会

私が子どもであった、遠い昔の学校(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学)は、不満や要求を訴える、ターゲットの場所ではありませんでした。唯一の教育機関である学校は「聖域」であり、その場で働く先生は「聖職」という捉え方が、社会全体に浸透していたからです。 少子化の今では、学校外の場所(幼児教室)や媒体(テレビやネット)から、知りたい知識や情報を得、体験でさえ容易にできてしまいます。これによって、貴重価値の薄れた学校全体の社会的地位が、ますます下がっている実態を、あなたも感じていると思います。 まして、「学校(文部科学省管轄)」に含まれない「保育園」は、「子どものお守り場+α」(αとは、例えば、音楽や体操などの教育)としか認識されておらず、社会的ポジションはそう高くはありません。そこで働く保育士のお給料をみれば、それを裏付けているとも言えるでしょう。 保育園料を払っている対価として、ホテル業界などのサービス業と同じように、要求すれば叶えてくれると言わんばかりに、やれ「トイレトレーニングは園でやってくれ」、「お遊戯会の配役を変えてくれ」、「子どもの嫌いな食べ物は給食で出さないで」など、あり得ない事を、権利と勘違いして主張してくる保護者や、 「どうして、うちの子が蚊に刺されたのですか?きちんと見ていました?」という,ちょっとしたことでも大ごとにし、不安や怒りをぶつけてくる保護者が、顕著に多くなっている…こんな社会だから、あなたの心は疲れてしまうのです(バブルの恩恵を受けた保護者から、そのような親が増えてきたという報告あり)。

人との繋がりが希薄な社会

どうして、このような保護者が増えてきたのか、その要因の1つに、核家族、一人親家族、SNSに依存する親などの増加は否めません。このような環境に置かれている親の多くは、コミュニケーションを不得手とし、コミュニティから「孤立」し易く、他者と心を通わすことができない「孤独」さを、多く抱えている可能性が高いのです。他に頼れる人がいないと、自分の子どもが不利な立場になった時、その現実を受け止められず、そこから生まれる葛藤を抑えるキャパシティーが爆発し、それが園に向き易いのです。 さらに、「保護者との会話が複雑になる」になる事も、「心の疲弊」に繋がります。私の体験を基に、会話そして信頼という感情が破綻していく仕組みをみてみましょう。 時:6月下旬 場面:幼稚園には発汗促進のため冷房設置なし。そんな蒸し暑い環境の中、お弁当を全て残し帰ってきた我が子、当時4歳、そこに気づいた私が、幼稚園に電話をかけ担任と話をしている様子です。 :「お弁当に全く手をつけないで帰ってきたのですが、うちの子はどんな状態だったのでしょうか?食欲なかったのですか?」 担任:「いいえ、食べていました。〇〇ちゃんの口に、お米がついていたのを見ましたので。」 :「でも、お弁当のお箸が、全く汚れていなかったのですよ、本当に食べていたのですか?」 担任:「はい、食べていました。」 :「箸を使わず、どのように食べていたのです?冷房もない暑い中で、 お弁当も食べないで家に帰すなんて、子どもをきちんと見守れない幼稚園は、あっという間に事故を起こし、テレビに流されますよ!」 と、つい、言ってしまったのです。この時、担任に対して、不満の感情が一瞬で生れたのを記憶しています。 電話をかけた際は、お昼ご飯の状況をただ確認したかっただけなに。簡単に、冷静(理性モード)が、一気に、プチ怒り(感情モード)に切り替わってしまったのです。 私は、理路整然と、担任としての責務を果たした的な先生の言葉に、嘘を感じ、うちの子が大事にされていないと思ってしまったのです。 (担任が嘘をついていたのかの真相はわかりません)。  【ちなみに、うちの子どもが通っていた、この幼稚園(神奈川県大和市)は、この電話から約2週間後の平成23年7月、当時3歳の男児を溺死(屋内プール)させてしまった事故を起こし、不幸にも、私が言い放った「テレビに出る」という言葉が現実になってしまったのです。(園長および担任2人が起訴されました)。】 このように保護者は、一番である我が子が不利な状態に置かれてしまうと、簡単に理性が解かれ、「感情」で話をしてしまい易いのです。保育者の中には、事実を話せば納得してもらえると、「理論」で対応してしまった方もいると思いますが、そうしてしまうと、簡単に会話がこじれ、保護者の信頼を失ってしまう危険が高いことを、この事例で、ご理解できたと思います。 ちょっとした「感情のズレ」で壊れてしまう保護者との関係…では、どのように対処すればよいのでしょうか。大事なところだけ覚えてくださいね。

保護者の訴えを聞き入れ、謝罪すべし。

*形だけの「すみませんでした」でも効果抜群! *保護者の言葉をさえぎらないで! *D言葉(ですから、だって、でも)はNG!(保護者の気分を害し易い) *上から目線で言わないで! *「一般的に」、「基本的に」、「普通は」という言葉も注意が必要!使い方次第では、  「うちの子は普通じゃないのか?」と,火に油を注いでしまう危険性もあるので。 さらに、 園が、一致団結し、クレームなどの苦情対応に当たるためには、マニュアル作成が大事になってきます。  以下に「苦情解決マニュアル作成例」を引用させていただきます。 *根拠法:平成26年内閣府令第39号第三十条(苦情解決) *目的:個人のスキルではなく苦情に対応できる仕組みをつくる(だれが初期対応したとしても、最終的には納得させることができるようにする) *How-to:①第三者委員会の設置 ②園内対応の仕組化 ② の「園内対応の仕組化」の例として、          ↓ 〇保護者対応担 ⇔ 担任+主任+園長 ☚ 担任1人では対応させない仕組みをつくる 〇クレーマー的な保護者の対応 ☚ 特別扱いしないことを職員間で周知徹底し、「ごね徳」だと思わせないようにする。 〇威嚇する保護者への対応 ☚ 威嚇された際、「威力業務妨害罪(刑法234条)になる可能性があるので、威嚇保護者に対して、警察に通報する旨を、全職員が伝えられるようにする。 1人の保育者に圧力が集中しないこと、園への苦情は園全体、職員全体への苦情という意識をもって、苦情内容の共有を図り、園一丸となって対応することが大事なポイントです。 園長だからといっても、1人で抱え込まない仕組み作りが必要不可欠です(平成14年3月、埼玉県狭山市の保育園園長、4か月にわたる執拗のクレームを受け焼身自殺してしまったという悲惨な事件を教訓に)。

まとめ

道徳心や正義感に長けているあなた。 だって、職業に保育士を選んだのだから。 わかります。そんなあなたにとって、自身の道徳心や感情を押し殺し、保護者に合わせ納得して頂く作業はとても大変だろうと察します。もしかして、「ご機嫌取り対応」をしてしまった経験もあるのではないでしょうか。全てを妥協してしまうと、そこから生まれる葛藤を上手く処理できす、あなたの心は蝕みます。 保護者に「答え」を出すことも大事です。が、必ずしも全てに「答え」を出す必要なんてないんです。これからは、あなたと保護者が、互い心地良いと思う妥協点を探しながら、解決の方に向かっていって下さい。あなたの「心の安定」があるからこそ、大切な「子どもの命」を護れるのです。 【参考図書】 モンスタークレーマーの終わりなき要求はこれで断ち切れる (著:援川聡/ダイヤモンド社) 保護者をクレーマーにしないために (著:ヴィヒルト千佳こ ファストブック) 【引用図書】 事例でみる園の防災・危機管理 (著:脇貴志 フルーベル館)
(文責:小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)
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