ヒーローにも悪役にもなっちゃう!?子どもにとっての紫外線 | ももいくジョブ

ヒーローにも悪役にもなっちゃう!?子どもにとっての紫外線

はじめに 2022年11月7日(日本時間)に、地球温暖化対策の国連会議「COP27」がエジプトにてスタートしました。この会議では、産業革命(18世紀後半から19世紀前半のイギリスより始まった鉄道などの技術革新によってもたらされた社会的変化を指す)以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるため、温室効果ガスの削減目標(2030年まで)に向けて具体的にどのようにしていくべきかの話し合いが行われます。 この日より少し前、ユネスコでは、アメリカ・ヨセミテ国立公園などにある世界遺産の氷河の1/3が2050年までに消失すると発表したばかりでした。氷河が無くなってしまうくらい、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加がもたらす弊害は、言うまでもなく「地球温暖化」です。 そこで少し思い出してください。「地球温暖化」、「温室効果ガス」と一緒に登場していた「オゾン層破壊」という言葉を。最近ではあまり耳にしなくなりましたよね。この理由の1つに、以下の関連性への影響が少ないということが明らかになったからでしょう。 温室効果ガス増加→オゾン層破壊→太陽光エネルギーが地表に多く注ぎこまれる→地球温暖化 しかし、オゾン層の破壊が地球温暖化に大きく寄与していなくとも、オゾン層に関わる懸念が全て消え去ったわけではありません。少なくとも、温室効果ガスが増えることで人体に有害な紫外線を吸収してくれる「オゾン層」が壊れてしまうことはわかっているからです。 まず、人体に関わる紫外線からおさらいしてみましょう。 ●UV-A(波長:315‐400㎚) 紫外線の9割を占める。成層圏にあるオゾン層に吸収されることなく地表に届き、皮膚の真皮にまでも到達することで、シワ・たるみを引き起こす紫外線。裸眼で注意(時には有害)が必要となる。UV-Aの中でも波長の短いものは、ビタミンDを合成してくれる紫外線でもある。 ●UV-B(波長:280‐315㎚) 皮膚の表皮で炎症をもたらし「そばかす」を作る紫外線。皮膚癌の原因ともなるこの紫外線は、オゾン層に全て吸収されることなく、ある程度地表に到着してしまう。裸眼では有害が出るが、表皮で大事なビタミンDを合成してくれる紫外線でもある。 ●UV-C(波長:100‐280㎚) オゾン層を発生させ、そこに全て吸収される紫外線。細菌、真菌などの微生物を死滅させる効果をもち、裸眼では有害で皮膚癌を引き起こす紫外線である。

紫外線はヒーロー?それとも悪役?

このように、人にとって紫外線は、時にヒーロー(飴)となり、時に悪役(毒)にもなる「諸刃の剣」のキャラをもつのです。 まず以下のコラムより、ヒーロキャラが全面にでると、子どもの成長にとってこんなにも頼もしいことを理解してください。 【ヒーローな紫外線】 「園外活動はやはり大事」 骨を丈夫にするカルシウム。しかし、そこには、ビタミンDの働きが不可欠です。この栄養素は、生体内のカルシウム維持の作用をもち、主に魚介類摂取そして紫外線より皮膚から合成されます。 しかし、母子手帳の文言変更(1998年から日光浴から外気浴へ)、母乳栄養(母乳にはビタミンD含有量が少ない)、紫外線対策商品の普及と外遊びの減少そしてビタミンD含有食品の摂り難さなどが要因となって、ビタミンD不足からくる「くる病」が増えているのです(2005年~2014年の期間で0歳から15歳の者を対象とした、有病率は、2005年の1.1(人口10万対)から年々増加し2014年は12.3(人口10万対)に達しています)。 魚介類中心の食べ物からは、ビタミンDを摂りにくいので、積極的に紫外線を浴びる園外保育は子どもの成長に不可欠です。 要は、子どもの成長を阻害する「くる病」の予防に欠かせないビタミンDの合成には、紫外線が必要不可欠であることを意味しています。 次に悪役メインだと、こんな影響がでてしまいます。 温室効果ガスによりオゾン層が壊れてしまうと、やはりここの影響は避けて通れません。 【悪役な紫外線】 「紫外線蓄積によって眼に影響が!?」 成長に欠かせない紫外線。けれど、その紫外線が眼に影響を与えてしまうこともあります。 WHO(世界保健機関)が提唱する「紫外線が眼の健康に及ぼす影響」には、18歳までの紫外線蓄積の程度によって、その後の眼の疾患(白内障*が多い)のリスクを高めてしまうことを記しています。 紫外線が最も強い4~9月(午前10時~午後2時)時期は、つばのある帽子とめがね(サングラス)で予防するようにしてください。 特に、メラニン色素の少ない欧米人は、子どもでもサングラスや日焼け止めを積極的に取り入れている傾向が高いです。近年、多国籍児を多く受け入れるようになった保育所等でもこの点の配慮が必要となりました。 すなわち、紫外線というのは18歳までの眼に蓄積し、その後の眼の疾患(特に白内障)の発症に影響を与えてしまう危険性が高いということ。だからこそ、紫外線対策として眼のケアが大事であることを意味しています。 *10代や20代で発症する白内障(若年性白内障)は、老年性白内障と違い、以下のような発症要因が認められている。 ① 紫外線 ② アトピー性皮膚炎による合併症 ③ 眼の打撲 ④ 生活習慣に起因する酸化ストレス(精神的ストレスや糖化ストレス) ⑤ ステロイド目薬の副作用 ⑥ 遺伝

まとめ

このように、紫外線のどこを見るかでそれがメリットにもなるし、デメリットにもなります。 しかし、人体に害を与える紫外線を吸収するオゾン層が壊れてしまうと、眼球や皮膚に悪影響が出てしまうことは言うまでもないことです。 そしてデリケートな眼球は、紫外線を溜めてしまう器官であり、子どもの頃からの対策が必要になることを忘れないでくださいね。 温室効果を出し続けた先進国で生活している1人として、COP27の今回の会議で、地球の気温がこれ以上上昇しない具体案が出される事を切に希望します。 参考文献・図書 ① 北中幸子「日本人小児のビタミンD不足の実態調査と国民への啓発」(2015年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告) ② 健やかな育ちを支える領域「健康」 上野奈初美(編者)、三浦由美 他(ミネルヴァ書房)2023年出版予定

(文責 小田原短期大学 乳幼児研究所 医学博士 准教授 三浦由美)

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