「普段の手の汚れをばい菌実験」から検証してみた~新型コロナウイルス共存時代到来中での、「正しい手洗い・消毒の条件」 その①~ | ももいくジョブ

史上初の、「緊急事態宣言」を発令させ、息切れ、倦怠感そして脱毛などの後遺症をも伴う厄介なCOVID‐19。そのワクチン開発が急がれる中、「手洗い」、「マスク着用」そして3密を避けた「ソーシャルディスタンス」という、新しい生活様式を取り入れ、2020年5月23日、宣言解除を機に、新型コロナウイルス共存の社会が動き出し5カ月ほど経ちましたね。

正しい手洗いの方法とは?

でも、気づいていましたか?推奨されている手洗い(手洗いすべき箇所でなく、どのくらいの時間手洗いしたらよいのか)そして消毒(どのくらいのエタノール量が適当なのか)のやり方は、各情報発信機関(厚生労働省①、病院②、新聞③)などによって異なり、統一してはいないのですよ。加えて、メディアに登場する、感染症専門医、感染症学者といった専門家でさえ手洗い時間は「30秒」とか「2回の手洗いが良い」等、見解がまちまち。

各機関が推奨する手洗い方法

①厚生労働省
②埼玉医科大学総合医療センター 感染症科  感染症専門医 岡英昭氏作成ポスター(2020年)
③東京新聞TOKYOWeb(2020年2月7日)
*「手洗い」すべき時およびその方法は記載されてはいるが、時間が記されていない。 *「手洗い」の仕方および時間(60秒)が記されている。 *「手洗い」の仕方および時間(20~30秒)が記されている。
また、1回の消毒で使用するエタノール量もあまり知られてはいないですよね。アメリカの手指衛生科学的データによると、少量(0.2~0.5ml)のエタノール量では石鹸手洗いより優れた効果はなく、エタノール1.5mlは3.0mlより効果が劣ると報告されていますが、たいていのディスペンサーボトル1回のプッシュ量は3.0mlも満たしてはいないのです。即ち、消毒をきちんと行っているつもりでも殺菌できる量を使っていない可能性があります。 「新しい生活様式」で、手洗い・消毒が日常生活に組み込まれてしまった、手洗いに慣れていない(医療・衛生・介護従事者以外)一般の方々は、情報の統一がなされていないと、一体何を信じたら良いの?と右往左往してしまいますよね。

手洗い方法で最適な方法は?実際に試してみた

そこで、筆者が担当する手指衛生の授業で、手洗いに慣れていない学生を対象に「普段の手の汚れ」そして「一定の汚れを付けた手」でどんな手洗い・消毒条件が良いのか、ばい菌(ウイルスではなくあえて細菌)測定実験で検証してみました!検証方法は”パームスタンプ法”です。手のひら(英語でパーム)を試料に押し付けて(スタンプ)手のひらにいる菌を確認する方法です。 今月は、「普段の手の汚れ」と各手洗いの方法(30秒手洗い、2回手洗い、60秒手洗い、エタノール3.0ml消毒)を比較して結果をお示ししますね。 ※来月号に、「一定の汚れを付けた手」における結果を提示させていただきます。
「普段の手の汚れ」による手洗い・消毒から以下のことが確認できました。 ちなみに、「細菌減少群」とは手洗い・消毒がきちんとできた人たちを、「細菌増加群」とは手洗い・消毒によってむしろ菌が増加してしまった人たちを表しています。
パームスタンプ法「3.0ml消毒」の結果の1例 (エタノール量3.0ml:ディスペンサーボトル2プッシュ量と近似) パームスタンプ法「30秒手洗い」結果の1例
① 「3.0ml消毒」、「60秒手洗い」、「30秒手洗い」、「2回手洗い」の順(それぞれ、85.1%、 72.5%、56.8%、55.9%)で、除菌の効果が認められた。 ② 細菌が増加する割合は、「2回手洗い」、「60秒手洗い」、「30秒手洗い」そして「3.0ml消毒」の順(それぞれ、44.4%、38.9%、31.3%、5.6%)で高かった。 ③ 上記の結果より、「普段の手の汚れ」における手洗い・消毒条件として、「3.0ml消毒」が最適な方法と考えられた。次に、「30秒手洗い」が挙げられた。 ④ 手洗い・消毒後、細菌が増加した群において、手洗い・消毒前の細菌数は細菌が減少した群のそれと比べ、少なかった(すなわち、手洗消毒が習慣づいた方の手は、むしろその行為によって菌が増えやくなることがわかった)。

実験でわかったこと

上記の結果のように、手洗いや消毒の後、菌数が増加したという報告は多々あり、この傾向は、手洗いに慣れていない一般の人たちを対象にした実験に多く、手洗いが仕事の中にある医療従事者を対象にした実験では、逆に、除菌率が高い(手洗い後、菌の増加が少ない)ことが報告されています。 手洗い・消毒の後に細菌が増えてしまった原因の1つに、手膜が洗い流され、皮膚奥に存在する常在菌(雑菌の増殖を防ぐ働きをもつ表皮ブドウ球菌など)が手表面に出てくるからとの報告があります。 また、筆者の今回の実験で、菌が増えてしまった新たな要因、「もともと、手指に生息している細菌が少ない」ことが確認できました。このように少ない菌に対して念入りに揉み洗い・消毒した結果、常在菌が剥がれた脂膜から手指に現れてしまうことで、菌が増えてしまう可能性が確認できました。 ですので、手洗消毒が固執するぐらいになってしまうと、むしろ皮膚常在菌が増えてしまうこと覚えておいてください!
でも、増えてしまった菌は常在菌だから別に気にしなくていいんじゃないの?!と思っているそこのあなた!(笑)いえいえ、手洗い殺菌消毒後に残存検出された皮膚常在菌の内の10%強は食中毒原因菌である黄色ブドウ球菌であったとの報告もあるのです。そんな手(手洗いをしているのに)でおにぎりなど食べてしまったら……考えただけでも恐ろしいですよね。 なので、手洗いに慣れていない一般の方が、新しい生活様式の中で、むやみに手洗い時間を長くしたり、1回の手洗いの中で回数を増やすことは、脂膜下にある病原体を手に出現させてしまう事に繋がってしまいます。 妥当な手洗い時間「30秒」と「手のひらに浸る程度のエタノール」を使用し消毒する方法が、「普段の手の汚れに」に対し、推奨すべき条件であることを今回の検証実験で明らかにしました。是非、是非、周りの先生にも教えてあげてください! (手洗い消毒によって手がボロボロというあなた…まず、手荒れによる傷が酷い場合はステロイド軟膏やクリーム【ステロイドは炎症を取り除く効果があるので、痒みがなくても使用することがあります)を第一選択薬として下さい。加えて、脂膜張りのため、ヒルロイドなどの保湿剤を欠かさずに!⇒子ども達のアトピー性皮膚炎の対応策と実は同じです)。 ※この実験内容は、第51号小田原短期大学研究紀要(2021年3月)掲載予定のものです。
(文責 小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)