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- 「普段の手の汚れをばい菌実験」から検証してみた~新型コロナウイルス共存時代到来中での、「正しい手洗い・消毒の条件」 その②~

はじめに
先月、あなたが見ているこのブログに記事を登場させてから1カ月あまりの間で、コロナ感染がより深刻(全国の感染者数2065人と4日連続2000人を超えている現状:11月29日現在)になってしまいましたね。
そんな中、イギリス、アメリカでは、一早くワクチン開発が成功し、今月にも接種が可能となった現実を前にしても、「症状が出る前に強い感染力」をもち、「小学生以下での重症化がみられない」(現段階の日本において)この病原体が相手では、決して、ワクチンが救世主になり得ないこと、合点できると思います。
なぜって、有効率95%*と謳われているこのワクチン、実は「遺伝子ワクチン」といって、コロナ遺伝子入りのワクチンを接種させ、体内に抗体を産生させるというもの。あなたが知っている「不活化ワクチン」、「生ワクチン」とは製法が異なります。遺伝子ワクチンの効果は、生ワクチンと同等か、それ以上である可能性も否めません。加えて、このワクチンは、あくまで「発症予防効果」であり、「感染予防」の効果を示したものではありませんしね。コロナによる症状が出にくい子どもが、このワクチンを接種し、重症化してしまうこともあり得ますし、無症状を特徴とするコロナワクチンを打って、発症に気付くことなく、周りの人々に感染させてしまう危険性も十分に考えられるからです。
*有効率95%とは、ワクチン接種をしていない群とワクチンを接種した群における発症率を比較した結果、接種をしていない群の発症率は、95%という意味です。つまり、ワクチン接種群の発症率は、5%ということになります。この成績は、季節性インフルエンザワクチンより、断然効果が高いものです(あなたも、経験ありませんか?インフルエンザワクチンを接種したのに感染してしまったってこと。海外で開発されたコロナワクチンの感染力および重症化制御効果は、ポリオワクチン並みの強さとも言われています)。
感染対策に大切なこと
そうなると、やはり、安全安心の感染防止対策って、耳にタコができるほど聞かされてる「手指衛生、マスク着用、3密回避が」が一番であることがわかりますね。ワクチンさえあれば、コロナ恐慌となってしまった、この世界を、魔法のように救ってくれると思っていた我々だけに、今更、「手を洗いなさい」、とか、「マスクしなさい」とか、国のトップから意識喚起されても、「もうとっくに実行しているよ!」と、強く言い返したくもなりますよね。でも、やはり、感染症にいたっては、この、当たり前の原点回帰が大事になってくるのです。
先月号で、「普段の手の汚れ」に対しの最適手洗い時間は、「30秒」、そして消毒のためのエタノール量は、手に浸る程度が適当です。と提示させて頂きました。手洗いに慣れていない人は、手洗い時間を長くすることによって、皮膚(手)の脂膜が剥がれ、その奥にある常在菌(手を細菌やウイルスなどの外敵から守る働きをもつ)が、表に出てきてしまい、結果、菌が増加しやすかったこと思い出してください。
手洗い実験~泥の汚れ付きの手の場合~
今回は、「泥の汚れがついた手」に対しての結果(30秒手洗、2回手洗い、エタノール1.5 消毒、エタノール3.0ml消毒)をお示ししますね(エタノール1.5mlは、ディスペンサーボトル1プッシュに近い量です)。
今回の測定法は、「グローブジュース法」といって、「手を揉み出す」という操作が加わっているため、先月号でお示しした「パームスタンプ法」より、正確に、ばい菌数を測定できます。 (グローブジュース法とは、滅菌水入りの滅菌手袋に手を入れ、揉み出し、手のばい菌を滅菌水に回収させ、その菌を培養、カウントする方法です)
「泥の汚れがついた手」における、条件手洗い・消毒では、以下のことが確認できました。
細菌測定結果:グローブジュース法
まとめ
グラム陽性菌の除菌効果は、手洗いでは高かったですが、エタノールの消毒(3.0ml、1.5ml)のみでは、手に生息している黄色ブドウ球菌、そして土壌中にいるボツリヌス菌、ウェルシュ菌等(ともに食中毒菌)といったグラム陽性菌の除菌の効果は弱かったですね。
ですので、子どもたちの野外活動やガーデニング等の後に、エタノール消毒だけで済ますという行為は、見た目がキレイな手になったとしても、食中毒を引き起こすグラム陽性菌が、殺菌しきれていない可能性が高いと言えます。
つまり、日常に組み込まれた「新しい生活様式」の中で推奨される、エタノール消毒法は、コロナウイルス(エタノールに弱いので)に対して、劇的に効果を発揮しますが、全ての病原体を、やっつけることは不可能、ということも、保育者であるあなたの記憶に、留めてもらえれば嬉しいです。ついつい、エタノール消毒ばかりしていると、「全ての病原体に万能」なんだと、錯覚してしまいそうにもなりますがね…(笑)。
※この実験内容は、第51号小田原短期大学研究紀要(2012年3月)掲載予定のものです。
(文責:小田原短期大学 准教授 医学博士 三浦由美)
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