ケガ対応の今~浸潤療法への理解と実践に向けて~ | ももいくジョブ

「浸潤療法」を理解しよう

今年も多くの「保育士等キャリアアップ研修」を担当させて頂いているが、その中で多くの受講生から質問を受けるのが「浸潤療法」です。 ここで、あなたもケガ対応知識についてアップデートしていってくださいね。 浸潤療法を理解するために 1)創傷(傷)に共通する応急処置 手当の基本は、ワン、ツー、スリー、つまり、洗浄(クリーン)、止血(トリートメント)、傷口保護(プロテクト)であり、詳細は以下のとおりです。 ●ワン:洗浄 異物が残らないように水道水でしっかりと! 水道水が無い場合は、「糖質」を含まないお茶で!) ●ツー:止血 ガーゼをあて「直接圧迫」を!ガーゼがなければタオル、ハンカチ又は「レジ袋」でも) ●スリー:保護 傷口の清潔を保ち、乾燥を防ぐために清潔なものをあて保護する) 2)受診の目安 ①5分間圧迫しても止血できない(動脈性出血) ②傷が深く、脂肪(黄色)、筋肉(赤)、腱(白)が見られた時 ③傷口2㎝以上の時(傷口の大きさは深さに比例することもある) ④異物が入っている ⑤顔にケガ(顔の表皮は体にくらべ薄いため、皮下脂肪に達しやすくトラブルになりやすい部分)

「浸潤療法」(モイスチャーヒーリング、モイストヒーリグ)とは?

1)消毒薬を使用せず、傷を乾燥させない手当法のこと 傷ができると、その傷を修復するために欠かせない成分を含んだ浸出液が傷口から出てくる。この浸出液によるジュクジュクした環境の中で、表皮細胞が移動したり、肉芽組織が増殖したりする働きが滑らかとなる。しかし、消毒液によって乾燥させてしまうと、自然治癒効果を発揮することができなくなってしまう。 2)「浸潤療法」手順 ①水道の流水で、異物や細菌をしっかり洗い流す ②清潔なガーゼで水気をとる  *出血があるときは、ガーゼなどで傷口をしっかり止血  *傷口に繊維が残らないようにする→化膿の原因となる  *5分以上止血しても止まらない時は病院へ ③傷口にワセリンを塗ったラップや、潤いを保つ絆創膏をぴったり貼って、  傷口が乾燥しないように守る ④1日1回(夏場は2回程度)は、傷の様子を観察する  *傷口を水道水で洗い、新しいものと交換する  *その際、膿や腫れ、赤みなど異常がないか確認する→異常があれば病院へ  *できたばかりの皮膚は、直接日光にたくさん浴びると色素沈着してしまうので、傷口が塞がってもしばらくは、絆創膏を貼り皮膚を守る。  *2週間以上回復しない場合は、受診する *保湿剤のワセリンをも使用しないという園が多くある。  この場合は、傷口の大きさのラップ(重ねて折りたたむことで強度がアップ)をあて、ラップの辺をテープで留めるだけで浸潤環境が成立する。 3)効果が期待できる傷のタイプ 湿潤療法が効果的な傷のタイプは以下のとおり。 擦り傷、深くない切り傷、靴擦れ、噛み傷(軽度)、打撲による傷、熱傷(軽度) 因みに、2度熱傷の際の「水疱」出現は、自然の浸潤法が出来上がっているので潰さないで保護することが大事。 4)「浸潤療法」に対象年齢はあるの? ドラックストアで市販されているハイドコロイド絆創膏(浸潤療法が施されている)の使用説明書には、「3歳以下(2歳以下)の使用は避ける」と記載しているものがありますよね。このため、あなたを含めた多くの園の先生が、「浸潤療法」に対し、どうしていいものかと迷走してしまうこともあると思います。  あくまで、「浸潤療法」は【自然治癒力】を利用しているだけなので、赤ちゃんでも害のない方法であることは覚えておいて下さい。ただ、市販されている絆創膏は一度貼ると、5日ほどそのままの状態を保つことができるぐらい粘着強度の高いもの(それが売りでもある)であるため、特に皮膚の薄い乳幼児が、貼り続けるという負担によって、赤みや痒み、かぶれ等を引き起こしかねないという懸念から、対象年齢を設けているのが真意なのです。決して、3歳(2歳)以下に「浸潤療法」が適していないというものでなく、絆創膏を含めたテープ等を「貼り続けることが良くない」ということをご理解下さいね。

まとめ

テレビCM(ハイドコロイド製剤絆創膏)で、一気に認知度を高めていったこの「浸潤療法」。保育者や養護教諭の教科書には、その処置が記載されるようになって久しい。 しかし、医療界の知識人である医師をもっても、日ごろから外傷処置を必要としない内科医あたりが救命救急のバイトをしたりすると、「消毒殺菌」が必要と今でも思ってしまっている節があります(医学生時代にそう習ったから)。 このように、医師の世界でさえも外科医から最新知識のアップデートが行われている真っ最中なのが、この「浸潤療法」なのです。 参考文献 草刈功 監修 「ここがポイント!学校新版救急処置」 農文協

(文責:小田原短期大学 乳幼児研究所 医学博士 准教授 三浦由美)

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